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【連載③】失敗しない店舗併用住宅の間取り・動線・設計ポイント

店舗併用住宅は、「自宅で働ける」「家賃が不要」「家事と仕事を両立しやすい」という大きなメリットがある一方、設計を間違えると 仕事も暮らしも不便になる という難しさがあります。

今回は、これまで多くの店舗併用住宅を設計してきた経験をもとに、失敗しない間取りの考え方・動線計画・必要設備・よくある後悔ポイント をまとめました。

店舗併用住宅を検討中の方は、ぜひ計画の初期段階で押さえておいてください。

 

 

店舗併用住宅は「動線」で成否が決まる

店舗併用住宅最大のポイントは、お客様動線と家族動線を完全に分けられるかどうか。

これを曖昧にすると、以下のようなトラブルが起こります。

・玄関で来客と鉢合わせ
・子どもの声・生活音がお店に響く
・お客様が家族スペースを横切る
・プライバシーが保てずストレスに
・匂いや音が侵入する

→ 過去の失敗例の多くが、この「動線」を軽視したケースです。

 

 

失敗を防ぐ「動線分離」の基本パターン

店舗併用住宅の動線分離には、主に3つのパターンがあります。

 

① 店舗用と住宅用の玄関を2つつくる(もっとも人気)

店舗併用住宅の約70%がこのパターンです。

メリット
・プライバシーを守れる
・来客が家族動線に入らない
・営業時間外は生活に集中できる
・飲食店やサロンなど幅広い業種に対応

デメリット
・玄関が2つ必要=建築コストはやや上がる
・外観デザインの工夫が必要

 

 

② 1つの玄関を共有し、内部で分岐する

ネイルサロンや教室など、来店時間が決まっている少人数来店の業種に向いています。

メリット
・建築コストが抑えられる
・雨の日も動きやすい
・動線の距離が短くなる

デメリット
・お客様と家族が鉢合わせる可能性がある
・生活感を隠す工夫が必要
・不特定多数の人に自宅の玄関を見られてしまう
・施錠の管理が必要

 

 

③ 店舗を1階、住宅を2階に完全分離

美容室・整体院・物販など、幅広い業種で採用されています。

メリット
・動線分離がしやすい
・騒音やプライバシー問題が少ない

デメリット
・年齢を重ねると階段が負担になる
・1階店舗の換気・においが階上に影響する可能性がある
・外階段にする場合費用が掛かる

 

 

成功する店舗併用住宅の間取り5選

店舗併用住宅で特に「うまくいっている」と感じる間取りパターンを紹介します。

 

① 店舗直結のバックヤード+住宅側からもアクセス可能

美容室・整体院で最多い配置です。

・タオル洗濯
・在庫保管
・レジまわりのバックヤード管理
・ゴミの一時保管

これらの作業が自宅側の動線とつながると、圧倒的に効率がよくなります。

 

 

② 住宅側の音を店舗に伝えない「緩衝空間」

特にサロン・教室利用では必須です。

・玄関ホール
・クローゼット
・廊下
・トイレ

こうした “空間のクッション” があるだけで、生活音・会話・子どもの声が伝わりにくくなります。

 

 

③ 店舗のトイレは必ず「お客様専用」を設ける

兼用にすると高確率で後悔します。

・家族が使った直後にお客様が来る
・お客様が使いたいときに家族が使っている
・生活感が出やすい

飲食店・サロンはもちろん、小規模な教室でも専用トイレがおすすめです。

 

 

④ 来客が迷わない店舗アプローチ(入口は迷わせない)

これも意外と見落とされがちです。

・道路から見て店舗入口がわかりやすい
・玄関と店舗入口のデザインを変える
・夜間営業の場合、照明計画も重要

方向性を誤ると、「どっちが店舗ですか?」と毎回聞かれるケースも…。
また、お客様が間違って生活スペースに侵入してしまうこともあるので、しっかりと分けることが重要です。

 

 

⑤ 店舗と住宅の“換気計画”を分ける

特に美容室・飲食・整体など「におい」「湿気」がある業種では要検討。

・24時間換気のルートを店舗と住宅で分離
・店舗側の換気量を多く確保
・キッチンや薬品を扱う場所は専用ダクト必須

換気が不十分だと、家の中に店舗のにおいが残る大きな失敗例 につながります。

 

 

店舗併用住宅で必要な設備・スペック一覧

店舗併用住宅は「普通の家+店舗機能」なので、設備も変わります。
住宅用の設備では足りないケースもあるので注意が必要です。

 

● 給排水(美容・整体・飲食系は必須)
・シャンプー台
・手洗い台
・給湯器の容量UP(通常の2倍〜3倍)
・排水管の太さ変更

 

● 電気容量(店舗は電力を多く使う)
・美容室は特に注意(ドライヤー・カラー器具など)
・電気容量40A → 60A〜100Aに増設が必要なケースあり

 

● 防音計画

・ピアノ教室
・整体ベッド周り
・面談スペース
・美容室の音対策

どの程度対策するかで予算が変わるため、業種に合わせた優先順位づけが重要です。

 

● 空調計画(店舗は住宅以上に重要)

・冷暖房効率
・温度ムラの解消
・換気と空調のバランス
・来客数に合わせた適正容量のエアコン

 

 

実際によくある後悔ポイント5つ

設計者として最も多く耳にする後悔をまとめました。

 

① 店舗の音が住宅側に響く
→ 壁構造を強化すべきだった
→ 緩衝空間を設けるべきだった

 

② 家族動線と来客動線が交差してストレス
→ 玄関を分けるべきだった
→ トイレも専用化しておけばよかった

 

③ 駐車スペースが足りない
→ 意外と見落とされるポイント
→ 生徒の送り迎えが多い教室系は特に注意(送迎の車が停車して近隣トラブルになることも)

 

④ 店舗の換気計画ミス
→ 住宅部分ににおいが入ってくる
→ ダクトの位置(住宅地の場合、近隣からのクレームに注意)

 

⑤ 店舗部分の面積が想定より狭く、使いづらい
→ ベッドや機材の配置を想定せずに設計してしまう
→ 必要寸法を最初に出すことが重要

 

 

まとめ:店舗併用住宅は“暮らしと仕事の最適解”を見つける設計が大切

店舗併用住宅の計画で大切なのは「どんな働き方をしたいか」「どんな暮らし方をしたいか」を同時に整理していくこと。

それが明確になるほど、間取り・動線・設備・広さの正解が見えてきます。

 

次回の【連載④(最終回)】 では、

・建築費の目安
・開業資金
・住宅ローンの組み方
・どのタイミングで相談すべきか
・失敗しない進め方のロードマップ

など、資金計画とスケジュールを徹底解説します。

 


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書いた人

広報staff

滋賀県東近江市にある工務店 株式会社ARCHです。
高性能高気密で長く快適に暮らせる家づくりを行っています。

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