【連載②】店舗併用住宅に適用される法律・建築基準・用途地域を徹底解説

店舗併用住宅を建てるうえで、最もつまずきやすいのが「法律・規制」の部分です。
普通の注文住宅とは違い、店舗(=非住宅)として扱われるエリアがあるため、建てられる大きさ・設備・用途が制限される場合があります。
今回は、これから開業を目指す方が最低限押さえておきたい法律や規制をまとめて解説します。
店舗併用住宅に関わる主な法律とは?
店舗併用住宅には以下の法律が関係します。
・建築基準法
・消防法
・用途地域(都市計画法)
・住宅ローン・融資関連の基準
・保健所・許認可(業種による)
業種によっては、さらに細かな規定が追加される場合があり、「住宅を建てればそのままお店を開ける」というわけではありません。
用途地域の規制に注意
土地には必ず用途地域が指定されており、「どんな建物を建てられるか」「どんな商売ができるか」が決められています。主な用途地域と、できる店舗の目安は以下の通りです。
①第一種低層住居専用地域
建てられる建物の高さや建ぺい率、容積率が低く抑えられ、最も規制が厳しい地域なので、良い環境が守られている地域です。店舗併用住宅にする場合は、非住宅部分(店舗)の床面積が、50㎡以下 かつ 建築物の延べ面積の1/2未満であることが要件です。
→ 美容室・予約制サロン・教室など小規模店舗向き
②第二種低層住居専用地域
主に低層住宅のための専用地域。住宅以外では150㎡以下の店舗、飲食店などもつくることが可能です。
→ 整体・治療院・軽飲食・物販など、幅広い業種が可
③第一種中高層住居専用地域
中高層住宅のための地域。住宅系以外では、大学、病院、2階以下かつ500㎡以下の店舗などをつくることが可能です。
④第二種中高層住居専用地域
主に中高層住宅のための地域ですが、必要な利便施設の立地も認めています。例えば、2階以下で、かつ1500㎡以下の店舗などです。
⑤第一種住居地域
大規模な店舗、事務所の立地を制限する住宅のための地域。住宅以外では、3000㎡以下の店舗、オフィス、ホテル、ゴルフ練習所などをつくることが可能です。
⑥第二種住居地域
住宅と店舗、オフィスなどの併存を図りつつ、住居の環境を保護する住宅地域です。カラオケボックスなどをつくることが可能です。
⑦田園住居地域
その地域で生産された農産物を使用する店舗は500㎡以下、それ以外は150㎡までの店舗をつくることが可能です。
⑧準住居地域
幹線道路の沿線等で、地域の特性にふさわしい業務の利便の増進を図りつつ、これと調和した住居の環境を保護するための地域です。店舗や住宅も建てられます。
→ 交通の便がいいので店舗併用住宅に向いている
⑨近隣商業地域・商業地域
日用品店や銀行、映画館、飲食店、百貨店などが集まる地域です。店舗や住宅も建てられます。
→ただし環境がにぎやかで、住まいとしての快適性は低い
⑩準工業地域・工業地域
工場やサービス施設等が立地する地域です。店舗や住宅も建てられます。
⑪工業専用地域
工場のための地域です。店舗や住宅は建てられません。
店舗面積の割合で変わる「建物の扱い」
店舗併用住宅は、店舗部分の面積割合によって扱いが変わります。
■住宅部分が50%以上 →「住宅扱い」
建築基準も比較的緩く、住宅ローンも使いやすい。
■店舗部分が50%を超える →「店舗扱い」
規制が厳しくなり「耐火性能・避難経路・防火設備」などが追加で必要になるケースがあります。
→ 美容室・整体・物販など、一般的な自宅開業なら 住宅扱いのまま計画するのが一般的 です。
店舗の種類によって設備が変わる
■美容室・理容室
・シャンプー台の給排水
・給湯器の能力アップ
・カット台の照度
・保健所の許可が必要
■飲食店
・排気ダクト
・二槽シンク
・トイレの設置義務(客用)
・手洗い場
・厨房の床材の指定
※飲食店は住宅街の用途地域では開業不可の場合あり
■整体院・リラクゼーション
・ベッドの配置スペース
・防音・プライバシー対策
・待合スペースの広さ
■教室(ピアノ・習字・学習塾)
・防音のための壁・ドアの仕様
・生徒の出入り動線
・駐車スペースの確保
消防法のポイント(軽視しがちな重要項目)
「お店」として扱われる以上、消防法も関わります。基本のポイントは以下の通りです。
・避難経路を確保する
・店舗部分の面積によっては火災報知器の設置義務
・美容室で薬品を扱う場合は換気計画が重要
・不特定多数が出入りする場合、安全基準が追加される
小規模な予約制サロンであっても、火災報知器の位置や数は要チェックです。
住宅ローンは使えるのか?
■住宅ローンが使える条件
・店舗部分の面積が50%以下
・店舗はあくまでも「付属部分」
・銀行が事業リスクを許容できるかがカギ
→ 美容室・ネイル・整体・オフィス系は住宅ローンで建てられることが多いです。
■住宅ローンが使えない場合
・店舗面積が大きい
・飲食店など店舗リスクが高い業種
・店舗売上が不安定と判断された場合
この場合、事業用ローンなど別の融資形態になります。
保健所の許可が必要なケース
店舗併用住宅で開業する場合でも、業種によっては必ず許可が必要です。
■許可が必要な業種例
・飲食店
・美容室・理容室
・ペット関連(トリミングなど)
・料理教室(営業扱いの場合)
■許可が不要な業種例
・ネイル
・整体
・セラピー系
・小規模オフィス
・ハンドメイド販売
・個別教室(非営業扱いの場合)
ただし、内装設備は基準を満たす必要があるため、早い段階で確認しておくことが大切です。
まとめ:法律・用途地域を理解して計画すれば失敗しない
店舗併用住宅は、普通の注文住宅よりも規制が多く、
・用途地域
・面積比
・業種の許可
・消防法
・ローン
などを慎重にクリアしていく必要があります。
逆に言えば、これらをしっかり設計段階で整理すれば、開業しやすく、働きやすい住宅が完成します。
次回の【連載③】では、店舗併用住宅の設計で失敗しないための「間取りの考え方・動線のつくり方・必須設備・よくある後悔」など、実例を交えて詳しく解説します。
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